きんぎょ

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『乃木三絶』にみる、今私たちがすべきこと。

 

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乃木希典という人物がいます。
東郷平八郎と並び、明治を代表する日本の有名な軍人です。
 
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彼は日露戦争(1904~1905)で陸軍の司令官を務め、日本を勝利に導きました。
 
多くの将兵を犠牲にして。
 
その数およそ6万人。
 
当時、ひとりの兵でも失うのは上官として大変不名誉なことであったといいます。
 
乃木はそのような自責の念に駆られながらも、旅順総攻撃、203高地争奪戦(中国東北部)を仕掛けることになります。
 

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 彼は『坂の上の雲』で、もっぱら軍人としての責務を全うする姿が描かれています。
 
その姿はある種、非人道的な恐ろしさすら感じさせるものであります。
 
その一方、彼は優れた詩人でもありました。
彼が戦争一禍で残した詩は特に有名で『乃木三絶』として現在まで語り継がれています。
 
今回は、その詩から私たちがすべきことは何なのか、考えてみましょう。
 
①金州城・下の作(きんしゅうじょう・しものさく)
 
    山川草木轉荒涼   山川草木轉(うた)た荒涼

十里風腥新戰場   十里風腥(なまぐさ)し新戰場 

征馬不前人不語   征馬前(すす)まず人語らず

金州城外立斜陽   金州城外斜陽に立つ

 

(歌 意:山も川もことごとくすべてが荒れ果ててしまっている。十里四方に血生臭い風が吹く。ああ凄まじい戦場だったのだ。戦いに疲れたのか馬も進もうとせず、将兵もまた話しもしない。金州城の町外れで、今、自分は夕陽を受けて、ただただ立ち尽くしているばかりである。)
 
これは金州城での戦(南山の戦い)の後、詠まれました。
死者数約4000、その中に乃木の長男・勝典もいました。
 
しかし「悲しい」という言葉は1文字もなく、ただただ無念である事を痛いほど感じさせます。
 
 ②爾霊山(にれいさん)
 

爾霊山険豈難攀   爾霊山は嶮(けん)なれども豈(あに)攀(よ)じ難(がた)からんや 

男子功名克艱(こっかん)を期す 

鐵血覆山山形改   鐵血山を覆って山形(やまがた)改まる 

萬人齊仰爾霊山   萬人齊(ひと)しく仰ぐ爾霊山

 

(歌 意:二〇三高地が如何に険しくとも、よじ登れないはずはない。男子たるもの名を立てるには、如何なる困難にも打ち克つ覚悟を持たなければならない。その決意で地形が変わるほどの激戦の後、敵陣を制圧した。一方で多くの命が失われてしまった。今静かに仰ぎ祈るのは、まさしく爾(汝)の霊の山。)
 
これは203高地の戦いの後詠まれました。死者数約15000。
203高地では、乃木の次男・保典が命を落としています。
 
軍人であり、父親でもある乃木。息子を「よくやった」と優しくなだめる親心が、垣間見える気がします。
 
③凱旋(がいせん)
    
           皇師百萬征強虜   皇師(こうし)百萬強虜(きょうろ)を征し

野戰攻城屍作山   野戰攻城屍(しかばね)山を作(な)す

愧我何顔看父老   愧(は)ず我何の顔(かんばせ)ありてか父老(ふろう)に看(まみえ)ん

凱歌今日幾人還   凱歌(がいか)今日(こんにち)幾人か還る

 

(歌 意:多くの皇軍の兵士を強敵の征伐に向かわせ、山野での戦闘で死体が山のようになる惨状になった。一体どのような顔で戦死させた兵士の親たちに会うのか、合わす顔がない。勝利を祝う歓声パレードが響く今日、一体どれほどの兵士が帰ってきただろうか。)
 
これは日露戦争講和条約ポーツマス条約)成立を聞き、凱旋帰国の日を思って詠まれた詩です。
 
死んだ将兵を帰らぬ人にしたのは自分のせい。
 
その責任感に苦しみ続ける乃木の感情がぶつけられています。
 
世間が戦勝ムードで沸く中、乃木だけはずっと戦っていたのでしょう。
 
 
〇今、私たちがすべきこと。
 
それはとてもシンプル。
「戦争の怖さを知る」です。
 
今日まで、様々な戦争がありました。
 
しかし1人で6万人を殺し、同時に息子2人を犠牲にした人間ほど、戦争の恐ろしさ知る者はいなかったでしょう。
 
乃木三絶は、その恐ろしさを極めて人間的な温かさでしたためてあります。
二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、後世に訴えかけてくれています。
 
しかし乃木の死後、日本は2度の世界大戦を経験し、多くの犠牲者を出しました。
 
さらに、今では1人で何百万もの人間を殺せる時代になりました。
 
武装勢力によるテロやサイバー攻撃、核爆弾や殺人ウイルス。
科学の発展により、いずれそれらがスマホ1つで操作可能な時代にすらなるかもしれません。
 
そうなれば、私たちも決して他人事ではありません。
 
乃木の詩はその生々しさ故に、私たちに戦争へのイメージを膨らませる作品となっています。
 
乃木がもし生きていれば、この平成の世を何と詠むでしょうか。